この頃、夕方過ぎが朝になってきた。
今日は昨日の23時に起きた。
ポツポツと聞こえる雨の音が静かな目ざましとなった。
夜は眠れない。むしろ神経が活き活きとしている。
PCとユーチューブにかじりつく6時間。
時々寝ようともするが、すっかり覚醒してしまって眠れない。
午前5時を過ぎた頃、家の廊下からぼんやりした空が見えた。
雨はすっかり止んだらしい。
「散歩に行こう。」
6時間部屋で座りっぱなしでだるくなっていたし、雨もいつの間にか止んでいた。
外は傘なしで歩けそうだ。
道路は雨の名残りがあり、乾き始めていた。
水たまりは淡く深い空の青を反射していた。
上を向いても下を向いても空がある。
中秋の名月から1日経った朝の月は、白くなり姿を消し始めていた。
今日の役目を終えようとしているのだ。
広すぎる空にしてポツンと見える月は、少し物悲しくも懸命に見えた。
ここに住んで2ヶ月が経つが、あまり周辺を歩いたことがない。
いつも歩かない道を歩いてみる。
何も考えずにただ道を歩いてみた。
今日の天気予報は見ていないが、きっと晴れだろう。
このあたりの住宅地は、首都圏の住宅地と比べると広く幅を取っている。
家同士が密集しておらず、適度な空間かそれ以上に余裕がある空間がある。
この近所は狭苦しさがなく、歩くだけでも自由に生かされている気がした。
面白いスタイルの家が多い。
雪対策からか、いくつかの家は玄関前をガラス戸で覆っており、黒いフレームで囲った見た目がどこかレトロな雰囲気を醸し出している。
家の側面は突き出したベランダがあるものが少なく、大抵のっぺりとしている。
屋根や色、それぞれの家が戸々に色味を出していて活き活きとしている。
何気ない角地もフィクションのようで、歩くだけで楽しかった。
散歩の途中で、カタツムリとアリとカラスに会った。
小さなカタツムリは歩道の上にいた。雨だったからきっと道端を散歩していたのだろう。
アリは1匹、夜勤だったのか忙しく歩きまわっていた。
カラスは3羽、油のせいか、青い光沢を放ち私の家の前にいた。
この生き物たちは、あと1ヶ月もすればどこにいってしまうのか。
雪の中をどのように過ごすのだろう。
移住者の私よりも、寒さを生きる術があるのだろうか。
散歩をしている人がちらほら。
犬の散歩をしている人がちらほら。
日曜日の朝6時なのに仕事に向かっていると思われしき人もちらほら。
大きな荷物を持って行き先不詳の人も1人。
そうした人とすれ違い、世界には他にも人がいるんだと安心感を覚える。
多い勢の人とすれ違うのは疲れてしまうが、朝の静けさの中、時々人とすれちがいながら歩くのは心地いい。
夜は夜で世界に隠されたかのような静けさの中、独りでいる安心感がある。
きっと夜には終わりがあるからだろう。
朝は朝で世界が色づき始め、誰かがいる安心感がある。
きっと暖かさの中にいたいからだろう。
午前9時に、この街の主要駅に出かけた。
適度にお出かけをしてお店で可愛い化粧品を見ては、「自分には似合わないだろう」と満足して帰ることがある。
お米と味噌汁が食べたいと思った。
ふと入ったチェーン店のお店で、まぐろのどんぶりと味噌汁のセットを注文する。
店員さんが「ただいまポストカードを配っています。」と、菊の絵が描かれたポストカードをくれた。
友達が8月にくれたポストカードの返信がずっとできずにいたので、ようやく返すことができる。
今日の1日を添えて返信を書いた。
ここは日本、北緯43度。
美味しいご飯屋さんはいくつか見つけたが、友達は1人もいない。
今日のような朝を何度も迎えられるのであれば、もう少し頑張れると思った。